COMICS

ダンドリくんBlack(泉昌之)

『大東京ビンボー生活マニュアル(前川つかさ)』と並ぶ名著『ダンドリくん』の続編かと思いきや、ダンドリくんの暗黒面が具現化した「ダンドリくんBlack」。Blackは、風俗やギャンブルについての知恵、段取りを指南してくれる。私は風俗もギャンブルもたし…

トゥルーデおばさん(諸星大二郎)

本当の意味での「創造」する余地なんてもうない。過去にある素材の分解+再構築をもって創造と言い、その組み合わせが過去に例を見なければ独創的と言う。諸星大二郎はいわゆる「伝奇物」と言われる分野において独創性を発揮してきた。神話、妖怪譚、伝説など…

キングダム#1(原泰久)

歴史冒険活劇。舞台は古代中国、秦。少年を主人公としており、荒唐無稽さも含め、正統派少年漫画の系譜。ヤングジャンプよりも週刊や月刊の少年ジャンプの方がずっと向いていそう。絵は下手だが、ストーリーと勢いだけで十分読ませる。今後に期待する良作。…

犬ガンダム 地上編(唐沢なをき)

ガンダムをねじって、ほどいて、踏みつけて、犬のオシッコをかけて、かきまぜて、天日で乾燥させてあるような内容。ガンダムのパロディーと言うのもおこがましい。ガンダムは好きだし、唐沢なをきも好きだ。しかし、何だって私はこんなくだらない本を買って…

駅前の歩き方(森田信吾)

この本で扱われているのは「常食」。B級グルメと似ているが、各地方でしか食べられず、名物ではなく土地の人々が普通に食べているもの。そして、地元の人にとっては、それが他所では食べられないものであることすらも意外である食べ物。 この作品では8つの常…

G.I.D.#1(庄司陽子)

性同一性障害(Gender Identity Disorder)を取り扱った作品。誰でも大なり小なり、異性に対する憧憬の念はある。しかし、私も含め多くの人は「まず心ありき」ではなく、「まず肉体ありき」で、精神がそれを受け入れているのではないだろうか。自分の肉体的…

シグルイ#6(南條範夫/山口貴由)

『駿河城御前試合(南條範夫)』原作の残酷剣豪漫画。小説を原作とする時代漫画は数あれど、その多くは絵を添えただけの絵物語に過ぎない。しかし本作は荒唐無稽な内容を圧倒的描写力で描ききる。挿絵を越え、原作と作画の相乗効果を産んでこそ名作を越え、…

伊庭征西日記 徳川直参の生き様と明治維新(森田信吾)

読み進めると見知ったエピソードばかりなので、『幕末遊撃隊(池波正太郎)』が原作かと思いきや、原作者名のクレジットがない。すわパクリか?といぶかしんだが、本書も『幕末遊撃隊』もどちらとも『征西日記(伊庭八郎)』を下敷きにしているのね。 「伊庭…

大市民日記#1(柳沢きみお)

小市民ならぬ「大市民」として、作者の分身である主人公が自らのこだわり、ライフスタイルについて語る一冊。所々で主人公が社会に対して爆発させる怒りは、最初期の『ゴーマニズム宣言(小林よしのり)』を彷彿とさせる。しかし、あくまでも好みと問題とし…

ファイブスター物語#12(永野護)

80年代おたくにとって聖書とも言える大河神話漫画。 連載開始から20年で12巻と言うことは大体600日で一冊の計算になる。しかも、この12巻は11巻が出てから3年も経ってから出ている。27年で107巻の『グインサーガ(栗本薫)』を見習って貰いたいものだ。それ…

アトモスフィア#1(西島大介)

表題のアトモスフィア(atmosphere)は気圏を意味し、リソスフィア(lithosphere):岩石圏やアセノスフェア(asthenosphere):岩流圏と区別される、と学生時代に教わった。こんな地球科学用語を表題に用いているし、SFの老舗早川書房から出版されているし…

神南火(星野之宣)

歴史、神話を下敷きにした伝奇漫画。 最近の星野はSFものよりも伝奇ものの方が面白い。『宗像教授異考録』シリーズもそうだが、星野作品は、諸星大二郎の『妖怪ハンター』シリーズより歴史公証がしっかりしているが、奔放さに劣る。前述した2シリーズと異な…

しあわせ(戸田誠二)

私は男らしく、ポジティブに生きたいと願っているが、心の中には少年も、乙女も、弱虫も住んでいる。ネガティブで、繊細な部分の私は、戸田誠二の作品を好み、救われる。戸田作品は、自分だけが考えすぎているのではない、こんな自分でもいいんだと思わせる…

イカロスの山#1(塀内夏子)

20年前、私がまだ高校生の頃、『おれたちの頂(塀内真人←後に塀内夏子に改名)』が週刊少年マガジンに連載されていた。今でもメジャーとは言えないが、当時は更にマイナーだったクライミングを扱った漫画であり、中学生だった主人公達は、そのままエベレスト…

バツイチ30ans(小池田マヤ)

三十代半ばになり、周りを見渡せば、バツイチ女性も精神病患者も珍しくない。本作は、30才バツイチ女性が自分の存在意義に悩み精神症(?)に陥る話。 社会が30代女性に求める役割と責任が「嫁」「妻」「母」であるのだとしたら、その役割を担い、責任を果た…

チーズスイートホーム(こなみかなた)

猫漫画。 どうにも、動物が立ったり、歩いたり、喋ったりする動物漫画は、あんまり好きじゃない。 だから、ディズニーのネズミ野郎とか、熊野郎とかが許せないし、、『新トムとジェリー』や『流れ星銀牙(高橋よしひろ)』にも没入出来ない。 動物が動物とし…

目の玉日記(小林よしのり)

昔、ボルネオのジャングルの中で洞窟の探検をしていた時、一番付き合いが長く、頼りにしていた直接の後輩、オサムの目が見えなくなりつつあった。 しかし、彼は、探検も山場を迎えていたその頃「失明しても悔い無し」と思い、我々にそれを告げず、一人で頑張…

愛・水族館 -柏木ハルコ短編集(柏木ハルコ)

柏木ハルコの短編集。 いかにも小学館好みの線の整理されたアニメ絵で描かれる奔放な性や裸体が彼女の特色である。 『いぬ』でのブレイク以来、柏木ハルコは「エロコメ作家」として認知されているかも知れない。 しかし、この短編集を読めば、柏木ハルコが決…

散歩もの(久住昌之/谷口ジロー)

私のバイブル『孤独のグルメ』作者コンビの最新作。 掲載紙は「通販生活」。 何気なく、中年サラリーマンが知らない街を淡々と散歩する。 散歩する場所は商店街だったり、住宅地だったり、公園だったり。 街角の日常に目を向け、そこに趣やわび、さびを発見…

怪力の母#1〜3(平田弘史)

伊豆の小大名、清水家を舞台に、領主の妻である怪力の女性を軸に展開される時代漫画。 平田一流の武家社会観をテーゼとして描きながら、アンチテーゼとしてヒューマニズムを展開する。 カムイ伝におけるコミュニズムもそうだが、時代作品における不殺論、ヒ…

カタリベ(石川雅之)

石川雅之は、私が最近注目している作家であり、既刊単行本はいまだ4冊しかないが、全て購入している。 既刊4冊のうち2冊は醸造系学園物、1冊は歴史物、1冊は短編集であり、いまだ自分の芸風、適性を模索していると言えよう。 さて、本作は、倭寇が跳梁跋扈す…

恋の門#1〜5(羽生生純)

特殊性の追求は、一般性の獲得へと繋がると言う。 本書は、漫画芸術家の男と同人作家でコスプレイヤーの女との恋愛物語である。 古くさくて取っつきにくい絵柄、一般性を有さない主人公達の趣味によって、大多数の読者はこの作品に拒否感を示すだろうから、…

HAL -Hyper Academic Laboratory(あさりよしとお)

「笑いとはズレから生じるものだ」と言う。 本書は、科学啓蒙漫画の体裁をとった、科学に対するパロディ漫画である。 誰でもあさりよしとおの持ち味である軽妙さに笑うことは出来るが、科学的知識、素養がなければ本書を楽しむことは出来ない。 ズレを楽しむ…

短編集(魚喃キリコ)

魚喃キリコは漫画家だが、これら作品は漫画と言うよりも、むしろ詩的である。 絵と文章が絡み合いながらも完全には一体化していない感じがするのは、魚喃の絵柄が静的であるせいなのか、それとも心理描写が卓越しているからなのか。 直接的な性の表現も有り…

荒野の蒸気娘#1(あさりよしとお)

あさりよしとおと言えば、私は「宇宙家族カールビンソン」を思い出すが、今時のおたくちゃんにとっては「新世紀エヴァンゲリオンの使徒をデザインした人」と言った方が通りがいいか。 あさりよしとおの作風と言えば、 レトロSF 牧歌的な風景 シンプルな描線 …

蒼天航路#36(王欣太)

ようやく、10年にも渡る連載が終わった。 有象無象の三国志漫画が林立する中、『三国志(横山光輝)』に次ぐ出来映え。 巻数も純粋に、『三国志(横山光輝)』の60巻に次いでいるのだから、三国志を描くためには紙数と年月が必要だと言うことなのか、それと…

コミック☆星新一 空への門(星新一)

中学生の頃、『ボッコちゃん(星新一)』を読んだ。 今で言うライトノベル分野が確立されていない頃で、星新一のジュヴナイル以上、ハードSF未満な感じが丁度良かった。 高校の図書館には星新一全集が揃っており、読破したのだが、途中からは同工異曲に感じ…

ヤング田中K一(田中圭一)

下ネタ漫画家、田中圭一の自伝的エッセイ漫画。 最近、田中は手塚治虫や本宮ひろし、永井豪の絵を模写しているが、模写もここまで行けば立派な芸風である。 田中はサラリーマン漫画家であるが、サラリーマン時の下ネタエピソードが凄い。 有る意味、専業漫画…

長い長いさんぽ(須藤真澄)

本や映画で泣くことはない。 所詮フィクションだと思うし、ドキュメンタリーであるにせよ他人事だからだ。 しかし、この本を読んだら、不覚にも涙がこぼれそうになった。 35才の親父がである。 この本の前作である『ゆず』『ゆずとママ』は私の座右の書であ…

弓道士魂 -京都三十三間堂通し矢物語-(平田弘史)

平田弘史は、私の最も敬愛する作家の一人である。 そして、その平田の中編で最も好きな作品がこの『弓道士魂』である。 『平田弘史全集』は全て所有しており、『弓道士魂』も収録されていたのだが、今回出版されたものは『弓道士魂 完全版』らしい。 いつも…