長い長いさんぽ(須藤真澄)

本や映画で泣くことはない。
所詮フィクションだと思うし、ドキュメンタリーであるにせよ他人事だからだ。
しかし、この本を読んだら、不覚にも涙がこぼれそうになった。
35才の親父がである。
この本の前作である『ゆず』『ゆずとママ』は私の座右の書である。
15年前、黒猫様を我が家にお連れし、お世話させて頂き始めた頃に『ゆず』は出版された。
動物愛好家や他の動物漫画にはまったく共感しないのに、須藤真澄のゆずへの限りない愛情が感じられたから、この作品にははまった。
同様に、私が我が家の黒猫様に限りない愛情を注いでいたからだ。
そのゆずが、亡くなった。
16才だったと言う。
須藤真澄は取り乱す。
そして、偏執狂的とすら思えるほどのやり方でゆずの死を悼み、ゆずをおくる。
しかし、その偏執狂的な須藤真澄の気持ちに共感し、落涙しそうになるのである。
我が家の黒猫様ももう15才。
いつお迎えが来ても不思議ではない。
その時、私はどう考えるのだろうか。
その日まで、黒猫様と豊かな時間を過ごしていきたい。
取り乱しながらも、作品に昇華させる須藤真澄表現者としての資質と言うか業に脱帽。
個人的には最高評価ではあるが、猫飼いではなく、前作の未読者にはそれほど高い評価を貰えないだろう作品。
少なくとも、『ゆず』『ゆずとママ』読後に読まれたい。
これを読んで涙せぬ女性とは付き合えない。
と言うか、付き合いたくない。

長い長いさんぽ ビームコミックス

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