怪力の母#1〜3(平田弘史)

伊豆の小大名、清水家を舞台に、領主の妻である怪力の女性を軸に展開される時代漫画。
平田一流の武家社会観をテーゼとして描きながら、アンチテーゼとしてヒューマニズムを展開する。
カムイ伝におけるコミュニズムもそうだが、時代作品における不殺論、ヒューマニズム論には、違和感を感じる。
ヒューマニズム自体は、普遍性を持つ思想なのかも知れないが、根本的な生活欲求が満たされない社会では、ヒューマニズムも芸術も発達しないのではないだろうか。
平田もそれを理解しているからこそ、富裕層である領主の長男にヒューマニズムを唱えさせ、周辺の人物にそれを諫めさせている。
このテーマ自体おかしくはないのだが、どうにも平田作品のリアリズムとこの長男のヒューマニズムが上手く融合していない感じがする。
そのため、平田の持ち味であるケレン味あふれながらも力業で引き込まれるリアリズムが薄らいでいる。
時代作品ファン、平田ファンなれば楽しめるが、一般読者の首根っこを掴んで引きずり込むほどの力は感じられない作品。

怪力の母 1 (SPコミックス)

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怪力の母 2 (SPコミックス)

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怪力の母 3 (SPコミックス)

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