恋の門#1〜5(羽生生純)
特殊性の追求は、一般性の獲得へと繋がると言う。
本書は、漫画芸術家の男と同人作家でコスプレイヤーの女との恋愛物語である。
古くさくて取っつきにくい絵柄、一般性を有さない主人公達の趣味によって、大多数の読者はこの作品に拒否感を示すだろうから、本作は商業的に大きな損をしている。
しかし、この絵柄でしか溢れる情熱を、おたく趣味でしかリアリティーを表現し得ないからこそ、羽生生純なのであり、彼の作家性である。
このような特殊な漫画でありながら、「小さな嫉妬心は可愛いが、強すぎる猜疑心はウザい」などと言う主人公達の行動の根底に流れているのは普遍的な恋愛感情である。
おたく的素養があった方がディティールを楽しめる。
しかし、おたく的要素を排除したとしても、本作は一級の純愛物語であり、地域や時代を超えた普遍性を持つ。
私は恋愛を主題とした漫画を好まないが、これだけ見事で魂の入った物語をものされると、否が応でも引きずり込まれてしまう。
とりあえず、読んで見ろ。
そう強気で言える数少ない作品。
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