コミック☆星新一 空への門(星新一)

中学生の頃、『ボッコちゃん(星新一)』を読んだ。
今で言うライトノベル分野が確立されていない頃で、星新一のジュヴナイル以上、ハードSF未満な感じが丁度良かった。
高校の図書館には星新一全集が揃っており、読破したのだが、途中からは同工異曲に感じた。
また、リテラシー(読解力)の上昇に伴って物足りなさも感じ、興ざめした。
とは言え、思春期に傾倒し、大きく影響を受けた作家の一人ではある。
この本は若手漫画家による星新一作品のコミカライズ集である。
星作品はショートショートが多いから、このようなオムニバス・コミックと言う形態に向いている。
音楽におけるトリビュートアルバム、カバーアルバムに相当するのだろうが、表現手段が小説から漫画へとシフトしているため、どうしても独自の表現が入る。
星作品は、ディティールにこだわらずプロットだけで読ませる性質のものである。
読者は脳内補完によってディティールを付与せざるを得ず、であるからこそ星新一作品は風化せず、普遍性を有していると言える。
しかし、漫画化する際には、各漫画家が脳内補完したディティールを表現する必要がある。
本作では、それら解釈のレベルと言うか密度が低い。
星作品のシンプルさを表現していると言えなくもないが、それならば漫画を読む意味がない。
漫画家も、中堅以下を多く用いており、企画先行の廉価版的な感じが否めない。
とは言え、ストーリーを読み進むにつれ、初読時を微笑ましく思い出す。
元々が軽妙な文体で読みやすい星作品であるから、あえて漫画で読む必要もなく、原作を読むことをお勧めする。
原作ファンにとっても特に読む必要のない一冊。

コミック☆星新一空への門

コミック☆星新一空への門