BOOKS

「浜松企業」強さの秘密(竹内宏)

浜松に生まれ、18の年に浜松を出て、36の年に浜松に帰ってきた。そんな私が、この本によって「浜松のことを何も知らなかったのだ」としらしめられた。文化の匂いのしない地方工業都市と思っていた浜松にこんなにも素晴らしい伝統と特色が有ったとは。浜松に…

旧社名に未練なし -岡田卓也発ヤオハン復活プロジェクト(加藤鉱)

我が家からもっとも近いスーパーマーケットはマックスバリュー(旧ヤオハン)だ。本社は何人かのキーパーソンへのインタビューと資料からおこされたヤオハン再建話。遠い地の話ではないから、親近感が湧き、会社更生のケーススタディーの題材になった。旧ヤオ…

セックスとニューヨーク(キャンディス・ブシュネル)

ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティー」の原作。ニューヨーク在住女性のセックスライフを赤裸々に著しているとは言え、出てくるのはセレブ系の人達ばかり(特に男性)。出版当時はともかく、現在ではそんなきつい内容ではない。映像化されてテレビ放送さ…

ツレがうつになりまして。(細川貂々)

夫が突然鬱病になった作者が記したエッセイまんが。父が突然鬱病になった身としてはいろいろ頷かされる。 「汝、病める時も健やかなる時も...」と結婚の誓いを立てたとて、心を病める配偶者を持つのはつらいだろう。私はいまだ配偶者を持ったことがないが、…

100個めのタマゴ -8年7ヵ月の涙と笑いの不妊戦争(うえさき ひろこ)

不妊治療の闘病(?)記。無精子症や、排卵がない場合を除くと、妊娠も不妊も確率の話になる。不妊治療とは、妊娠の確率を上げるために施す様々な作業のことであり、どこまで行っても「確率の上昇」にしかならない。そして、タマゴは月に一回排卵されるだけ…

35歳からの女道(横森理香)

35歳になったので読んでみた。作者によると35歳は人生の転換期らしい。確かに周りの人間を見てもそう思う。 人生の折り返し点であり、体力的にも35歳あたりを境に下っていくのだろう。占いなどにはまっていたあたりは共感出来ないが、「35までにいろいやりつ…

国境の南、太陽の西(村上春樹)

村上作品の八割方を読み終わり、あまり有名ではない本作を手にした。本作の内容を端的に言うと、三人の女性との関わりを懐古し、悶える37才妻子持ち男性の話である。 登場する女性は 島本さん:初恋だけど結ばれなかった理想の女性 イズミ:思春期に恋愛し、…

活断層とは何か(池田安隆/島崎邦彦/山崎晴雄)

学生時代に読んだ本がブックオフの100円コーナーにあったので、とりあえず救出して我が家に連れ帰った。そこかしこに読み覚えがあるのだが、読んだ当時よりも沢山の収穫があった。きっと、学生時代には全部を理解していなかったのだ。同じ本でも、自分の居る…

宇宙世紀科学読本 -スペース・コロニーとガンダムのできるまで(永瀬唯)

ガンダムの宇宙世紀世界を題材にした二足歩行ロボットやコロニーに対する科学読本。身近な題材を用いて科学を啓蒙した作品には、名著『ロウソクの科学(ファラデー)』や、名随筆『茶碗の湯(寺田寅彦)』などが挙げられる。私にとっても、今の若者にとって…

チェーン・スモーキング(沢木耕太郎)

エッセイ集。沢木耕太郎と言えば、我々の世代のバックパッカーにとってのバイブル『深夜特急』が代表作である。ノンフィクションライターの技量を持って綴られるエッセイは、情緒的な内容を精緻な筆で描かれている。 本作中の一編「シナイの国からの亡命者」…

正しい保健体育(みうらじゅん)

性教育を主体としたみうらじゅん流保健体育の教科書。「男の価値はサオではなくフクロで決まる」とは名言だが、どちらにせよ股間でしか男の価値は決まらないのだろうか。苦笑しながらも頷けること多し。性教育に対するパロディーの呈を装っているが、みうら…

生と死の分岐点 -山の遭難に学ぶ安全と危険(ピット・シューベルト)

豊富なバックデータに基づいて山岳事故を検証し、追試し、紹介する山岳事故の事例紹介書。 ドイツ人と言えば、粘着質の職人気質を想像するのだが、本書は、その職人気質が良い方向に発揮された良書。山岳事故の原因は、天候の不順や不運など、天災的なもので…

黒澤明と「七人の侍」(都築政昭)

映画『七人の侍』のストーリーを追いながら、創作の内情についてレポートしているドキュメント本。『七人の侍』は10回以上繰り返し見ているので、台詞もほとんど全て覚えているのだが、その台詞一つ一つについて詳細な解説があり、黒沢は理詰めで映画を作っ…

プチクリ(岡田斗司夫)

プチクリとは、プチ・クリエイターの略で、岡田斗司夫の造語である。それで生計を立てているクリエイターをプロクリ(プロ・クリエイター)と、それで生計を立てて居ないクリエイターをプチクリと定義し、「楽しくクリエイトすることが大切であり、プロであ…

出家日記 -ある「おたく」の生涯(蛭児神建)

高校時代の同級生にY田と言う男が居た。「毛の生えた女は不潔だ」と広言して自らロリコンを標榜し、大のアニメ・特撮ファンだった彼は、生粋のおたくだった。もっとも、宮崎勉など猟奇的ペドファイル達が台頭するまで「ロリコン」は、一昔前の「萌え」と同様…

この博物館が見たい!(桑原茂夫)

博物館が好きだ。 予算が足りなければ、美術館も音楽ホールも体育館も文化会館も全て廃止してもいいから、図書館と博物館だけは存続させて欲しいと思うくらいに。 きっと博物学が好きだから、その直系の子供である地質学なんかに関わっているのだろう。 もっ…

ピュタゴラスの旅 (酒見賢一)

SFにも、時代小説にも、ルールがある。 SFでは「科学的であること」、時代小説では「史実と矛盾しないこと」がルールである。 このルールから逸脱しても面白い作品は面白いのだが、SFや時代小説としては認められない。 私としても、科学的誤謬や歴史的誤謬を…

ソロモンの指環(コンラート・ローレンツ)

ソロモンの指輪とは、古代イスラエルの王ソロモンが有したと言われる指輪で、これを身につけて動物と会話したと言う。 本書はインプリンティング(刷り込み)現象の発見などで知られるノーベル賞動物生態学者のエッセイ集。 動物と行動を共にし、動物の生態…

墨攻(酒見賢一)

春秋戦国時代の墨家を描いた中国歴史風小説。 本作を漫画化した『墨攻(酒見賢一/森秀樹)』は既読。 大概の映画、漫画はダイジェスト版であるが、本作は原作よりも漫画版の方が多く肉付けられており、また、森の描写力とあいまって、古代中国の籠城戦につい…

実戦!恋愛倶楽部(一条ゆかり)

本には、「読みたい」や「面白い」の他に、「家に置いておきたい」との評価基準がある。 買っといてこんなこと言うのも失礼だが、この手の本(恋愛指南書?)は30男の本棚に置いておきたくない本の筆頭である。 一般的な女性向け恋愛指南書が「自分らしく生き…

アームストロング砲(司馬遼太郎)

幕末歴史小説短編集。 中の数編に既読感を感じているのはデ・ジャヴか、勘違いか、それともほんとうに既読なのか? 乱読のつけが溜まり、自分の読んだ本の記憶すら定かでない...反省。 表題作である「アームストロング砲」は、佐賀鍋島藩を舞台にした技術開…

性の冒険者たち(佐竹大心)

ホスト、ソープランド経営者、AVスカウトマン、AV監督、風俗情報誌編集者、エロ漫画家、ストリッパー、ニューハーフ、おナベ、女装家、テレクラ探検人、縄師、ダッチワイフメーカー社長など、各分野での現役さん達へのインタビュー集。 6年前の本だが、今更…

博士の愛した数式(小川洋子)

数字をスパイスにして、人間愛でカモフラージュした老人とバツイチ子持ち女性の純愛物語。 我々地質屋や地形屋が石や地形に意味を持たせ、情緒を感じ、愛することが出来るように、数学者は我々にとって無味乾燥な数字に意味を持たせることが出来るのだろう。…

下流社会(三浦 展)

日本社会が階級社会に変化してきていると言われて久しい。 時間が経つと溶液が分離するように、社会体制が落ち着いてから時間が経つと、人も分離して行くものなのだろうか。 いや、歴史的に見るとこれはもうほぼ確実に社会体制が安定すると、階級社会になっ…

マンガは今どうなっておるのか?(夏目房之介)

まんが評論本。 大衆文化、サブカルチャー、カウンターカルチャーであったまんがが、文化、メインカルチャーの域にシフトしようとしている。 まんが自体が成長期から成熟期に移行しているということでもあろう。 最近になって、まんが研究や評論の動きがぽつ…

精神科に行こう!(大原広軌,藤臣柊子)

パニック・ディスオーダー(パニック障害)を持つ著者と鬱病を持つ漫画家の共著による精神科入門書。 自分には精神障害が無いから分からない心の動きを文章、漫画によるエッセイ方式で教えてくれる。 著者は「『精神科に行くのは恥ずかしい』なんて偏見を持…

SNSを深ーく知って長ーく楽しむための本。(寺崎 美保子/ケイズプロダクション )

SNS(Social Networking Site)を、と言うよりネットワーク全体に対しての入門書。まあ、SNS自体がNetworkの1ジャンルなのだから当たり前と言えば当たり前なのだが。 インターネット草創期、パソコン通信の頃からネットに親しんできた私にはちと拍子抜けな内…

最強萌系メイド喫茶ガイド

メイド喫茶ガイド本。ある人に「萌え」や「メイド喫茶」を説明するために資料用に購入。個人的には眼鏡メイドが一番ツボに来る。最強萌系メイド喫茶ガイド (ミリオンムック)出版社/メーカー: ミリオン出版発売日: 2005/05/31メディア: ムック購入: 1人 クリ…

“子”のつく名前の女の子は頭がいい -情報社会の家族(金原克範)

マスメディアとコミュニケーションシステムに対して社会学的見地から描いた本。論の出発点は、「高校合格者の一覧表において、子の付く名前(友子や絢子など)の比率は、偏差値の高い高校ほど高い傾向が認められる」と言う統計的なデータらしい。しかし、そ…

業界の濃い人(いしかわじゅん)

漫画家、文筆業の「濃い」人々をネタにしたエッセイ集。題材にされている人々を知らないと面白くもなんともないだろう。ネタにされている人々は、いしかわじゅん同様当年とって35才の私よりも一世代上の方々だ。私もどうにかついて行けないことはないが、一…