“子”のつく名前の女の子は頭がいい -情報社会の家族(金原克範)

マスメディアとコミュニケーションシステムに対して社会学的見地から描いた本。論の出発点は、「高校合格者の一覧表において、子の付く名前(友子や絢子など)の比率は、偏差値の高い高校ほど高い傾向が認められる」と言う統計的なデータらしい。しかし、その理由に対する考察は何ら定量的ではなく、著者の主観、定性的なデータのみから導かれており、説得力が低い。これでは、血液型性格判断占星術の域を出ないのではないだろうか。
「娘の名前に子を付ける」親は保守的であり、その親に育てられる娘は、文化、環境的に成績が良くなると言う論旨であり、更にそこにメディア論、コミュニケーション論がつながる。しかし、子供の成績との相関を取るのならば、他の様々な要因、例えば遺伝子的には「両親の偏差値や学歴」、環境的には「仮定の収入、地域特性、兄弟数」などの方がはるかに優位であると考えられる。
エキセントリックなタイトルや、乱暴な仮説で衆目を集めるのは、商業主義的な手法であり、元来はそことは対照的な領域にあった学術分野でもその手法が採用されてきているのは喜ぶべなのか悲しむべきなのか。どんなアピール手法を用いたとしても、最終的に重要なのは中身なのだが、中身の判断が出来ない人間を相手にする場合には、コマーシャリズムが大切だと言うことなのだろうか。
特に読む必要のなかった一冊。