マンガは今どうなっておるのか?(夏目房之介)

まんが評論本。
大衆文化、サブカルチャーカウンターカルチャーであったまんがが、文化、メインカルチャーの域にシフトしようとしている。
まんが自体が成長期から成熟期に移行しているということでもあろう。
最近になって、まんが研究や評論の動きがぽつぽつとではありながらも出てきた。
まんがの発行部数や普及度からすれば遅きに失したくらいであり、今更熱の冷め切った国文学などを研究するよりもはるかにやりがいのある仕事であろう。
夏目房之介と言えば、夏目漱石の実孫であり、「BSマンガ夜話」に出てくるまんが評論家でもある。
数少ない「画の描ける」評論家の一人であり、実体験に基づいた作画技法分析には追随する者が居ない。現代まんが評論界においては呉智英に並ぶ第一人者の一人である。
そんな彼の最新作ではあるが、研究書ではなく、エッセイ集、コラム集と言った趣で、コアなまんがファンには物足りないであろうが、入門書としては良書。
惜しむらくは、夏目の年齢的なことからやむを得ないことではあるが、感性、評論対象がいささか古く、いまどきのまんがについて行けていないことである。とは言え、まんが史を踏まえ、権威付けられた作品に対する評論を行うことは、今時のまんが研究を行う際に必要不可欠なことだから、その意義は大きい。
しかし、ロックが、ジャズが、茶道がそうであったように、権威付けられた文化はラディカルな人々に疎んじられ、陳腐化していく。
まんがもいつかはそうなっていくのだろうなあ。

マンガは今どうなっておるのか?

マンガは今どうなっておるのか?