アームストロング砲(司馬遼太郎)

幕末歴史小説短編集。
中の数編に既読感を感じているのはデ・ジャヴか、勘違いか、それともほんとうに既読なのか?
乱読のつけが溜まり、自分の読んだ本の記憶すら定かでない...反省。
表題作である「アームストロング砲」は、佐賀鍋島藩を舞台にした技術開発譚である。
鍋島など、猫騒動くらいしか思い浮かばないが、開明的な藩であったらしい。
幕末当時は日本一の技術力を誇っていたと言う。
しかし、佐幕、倒幕の旗印を鮮明にしなかったため、明治期に権勢を振るえず、今の佐賀に技術力の残光はなく、福岡に馬鹿にされる始末。
佐賀藩の領民にとっては、重税を仰がされただけで利が無かったと言うことか。
科学も技術もその用い方次第であると言えるかも知れないが、大局的な視野から見れば、佐賀藩の科学技術は日本の役に立ったのだろう。
とは言え、それも更に高所から見れば、日本以外の他国を苦しめただけかも知れない。
科学や技術は必ずしも人を幸せにはしない、と言うことは太古の昔から繰り返されてきた真理なのかもしれない。
とは言え、沢山の幸福を産んできたと言うのも事実。
「要は使い方」ってのも陳腐な結論だな...。
大村益次郎村田蔵六)を主人公とした『花神司馬遼太郎)』でも佐賀藩が出てくるらしいので、次はそちらを読もう。

新装版 アームストロング砲 (講談社文庫)

新装版 アームストロング砲 (講談社文庫)