御用金、烈顧記他(平田 弘史)

ここ30年程の大多数の漫画を読破した一漫画ファンとして、平田弘史は、最も好きな漫画家の一人であり、それを広言するにはばからない。
最近、平田作品の復刻が相次いでいることは1平田ファンとして嬉しいが、反面、孤高の漫画家であった平田の良さがはたして現在の大衆に受けるのか不安である。更に言えば、マニア的スノッブ根性からすれば、あまりメジャーになって欲しくないとすら思っており、痛し痒しである。
とは言え、最近復刊されたものは
1.既刊平田弘史全集など(私は所有しているが絶版)に収録されている
2.原稿紛失のため雑誌原稿を取り込んだ汚い画質
3.駄作だから今まで復刊されていなかった
4.高価
のいずれか、あるいは複数を兼ね備えているものばかりで、コストパフォーマンスは低い。
原画紛失は理解出来るし、それでも復刊すると言う情熱も尊敬するが、それならばデジタルリマスタリングとまでは言わなくとも、せめて取込画像の簡単なゴミ取り処理、文字フォントの打ち換えくらいはして欲しいものだ。それもせず、また既刊であるから新規原稿料も発生しない作品を一冊1500円以上で発売するのはいかがなものかと思う。紙質も悪いし、この半額でもいいのではないか。
無論、発刊時の雰囲気をしのんで、との言い訳もあろうが、それでは企業努力も何もせずに居るラーメン屋が十年一日の古くさいラーメンを作って居ながら「懐かしい味」と主張するのと同じで、現在を生きる消費者の立場からは共感出来ない。その考えに共感出来るのは同時代を過ごした同士だけであろう。
平田ファンなれば、買う気概は持っているのだが、友人に「絶対おすすめ」と貸し出す気もしない一冊。

烈願記 (平田弘史傑作選 (昭和43年))

烈願記 (平田弘史傑作選 (昭和43年))