Boiled whitebait

「名物に美味い物なし」と言う。
流通の発達した昨今、美味い物ならすぐ全国に普及するから、特定地域のみで食せる美味い物なんてそうそう残っていない。
さて、静岡県には名物も美味い物も沢山有る。
有名どころでは浜名湖のうなぎ、県内全域でお茶、みかん、中部、東部でわさび。
海産物も豊かで、マグロの水揚げ量は日本一だし、由比の桜エビ、駿河湾の金目鯛、伊豆の鰺、伊勢エビも特産。
また、加工品では、浜松の餃子、静岡のおでん、焼津の黒はんぺん、富士宮の焼きそばなども有名である。
しかし、ご当地でしか食べられず、しかも「美味い」ものは少ない。
やはり、鰻など「美味い」ものは全国どこででもそれなりに食べられるし、ご当地でしか食べられないものは珍味系が多い。
そんな中、私が大好きで、他の地域ではあまり食べられないものがある。
遠州灘特産で、しらすを海水等でそのまま茹で上げた「釜揚げしらす」である。
小魚を茹でただけだから、日持ちせず、単価も安いため、大規模な流通に乗らない。
同じ黒潮沿いの房総半島や伊勢半島でも釜揚げしらすは作られているらしいから、必ずしも静岡県特産ではないかも知れないが、私は静岡県以外のところでほとんど釜揚げしらすを見たことがない。
静岡県外の居酒屋でしらすおろしを頼んで、大根おろしの上に硬いちりめんじゃこが乗ってくると本当にがっかりする。
ちりめんじゃこなんて、ダシ用で、食うもんじゃねーよ、って。
しらすおろしってのは、たっぷり柔らかい釜揚げしらすが乗ってて、釜揚げしらす1：大根おろし1くらいでなきゃ。
そして、しょっぱいしらすに更に香り付けでちょっぴり醤油を垂らしてかきこむ。
あるいは、炊きたてご飯の上にたっぷりの釜揚げしらすを乗っけて、こちらもちょっぴり醤油を垂らしてかき込む。
これ、最強。
頭も骨も内臓も一気に食べるから栄養価も高い。
小さい頃は、釜揚げしらすの中に混ざっている小エビや子タコ、子カニを妹と奪い合ったものだ。
しらすシーズンの3月が待ち遠しい。