皇国の守護者#1(佐藤大輔/伊藤悠)

架空戦記漫画。ライトノベル話題作のコミカライズとのことで、とりあえずおさえておこうと購入したのだが、それなりには楽しめた。ライトノベルはSFとして評価するにはいまいちな作品が多いのだが、エンターテインメント性は高く、若い作家が自由に書ける場としての意義は大きい。本作も日露戦争的な舞台設定に、ゲド戦記的な龍やサーベルタイガー、エスパーが登場し、SF物としても戦記物としても眉唾物なのだが、それなりに読ませる。とは言え、原作を購入しようという気にもなれず、それくらいなら一流の歴史小説や一流のSF、一流のファンタジーを再読する方が良い。
しかし、これらライトノベルの奔放さこそ、実は日本的ペーパーバックであり、アメリカにおける粗製乱造型SF、ヒロイックファンタジーに相当するものではないだろうか。アメリカ型ヒロイックフンタジーやSFの悪しきエピゴーネンと化していた初期ライトノベルものに比べ、最近のライトノベルは、日本の歴史物や中国の歴史物、あるいは名作漫画をフィーチャーしたものが多い。本作しかり、『青狼記(楡周平)』しかり、『後宮小説酒見賢一)』しかり。「ごった煮」こそ優れたエンターテインメントの土壌である。これら「ごった煮」をオリジナルの域にまで昇華してこそ、文化と言えるのだろう。

皇国の守護者 1 (ヤングジャンプコミックス)

皇国の守護者 1 (ヤングジャンプコミックス)