火星の土方歳三(吉岡平)

スペースオペラ末弥純の表紙と題名がツボに来て、15年くらいぶりに朝日ソノラマ文庫を購入。函館で散華した土方の魂が火星に転生し、緑色4本腕の宇宙人や、半裸の女王様達と出会いつつ、治安警護のための浪士隊を結成する。こう聞くと単に荒唐無稽な話だが、本作は古典スペースオペラであるE・R・バローズの火星シリーズを下敷きにしており、火星シリーズの世界観と新選組に対するオマージュで満たされている。バローズと言えば、火星シリーズの他にターザンシリーズや地底世界ペルシダーシリーズも遺しているが、このうち地底世界ペルシダーシリーズのみが中学生時代に既読なのは、私が後に洞窟探検家となった萌芽なのだろうか。簡単な漢字にもルビがふってあり、逆に読みづらいが、ジュヴナイルだからやむなし。スペースオペラ(特にバローズの火星シリーズ)と新選組(特に『燃えよ剣司馬遼太郎)』)の両方に馴染みがあれば文句なく奨められるし、どちらかだけしか知らなくても十分に楽しめる良質なエンターテインメント作品。

火星の土方歳三 (ソノラマ文庫)

火星の土方歳三 (ソノラマ文庫)