Breakthrough

地質コンサルタント会社に勤めているからと言って、常に全ての地域の全ての地質において顧客を凌駕し、成果を得るに十分な知見を有しているとは限らない。依頼を受けた後で必死になって下調べをし、涼しい顔をして、能書きを垂れることも多い。白鳥は優雅に浮いている様で、実は水面下で必死にもがいているのだ。
しかし、相手は自然である。いくら下調べをして、入念に調査計画を立てても、当初の予測を大きく外れた結果が出てきてしまうこともある。人的改変の多い地域ではなおさらだ。そんな時は、「いやー、当初予想と大きく異なりましたが、こういうことがあるから、調査はおろそかにできませんなあ」などとうそぶく。
当初予想を大きく外れた結果が出てきても、そのデータに合理的な解釈を施して、何らかのモデリングが出来れば良いのだが、それがうまく行かないこともある。調査を何種類も行って、それらが自分の想定したモデルに対して相反する傾向を示していたり、データ同士が相反している場合はなおさらである。
そんな時はただうなる。何か良い解釈はないか、文献を漁り、同僚、上司、学生時代の知人などに助言を求める。それで何らかの解釈が付けばいいのだが、そうでない場合は魔法の言葉、「断層とその影響」を使ってお茶をにごす(私と同業者の名誉のために言っておくが、本当に断層起源でわけのわからん地質になることは多い)。
今抱えている物件も、当初予想に反した調査結果の出てきた物件で、あばれはっちゃくであれば、座禅を組んだり、ブリッジをしたり、逆立ちしたりしているはずだが、いかんせんそんな決めポーズを持っていないので、ただうなるばかり。
そんな中、突然、何かがはじけた。あるモデルを当てはめれば、ほぼ全てのデータが合理的に、統括的に説明出来る。グラフィックソフトを立ち上げ、その地形変遷モデルを4コマ漫画の様に作成する。至福の時だ。もう、楽しくて仕方がない。「さすが俺」と「自分で自分をほめて」あげたくなる。同時に「何でこんなことにもっと早く気付かなかったんだろう...」との自戒の念も生じているのだが、ひとまず棚に上げておこう。モチベーションに水を差してはならない。
たまに、こんな喜悦があるから、この仕事はやめられない。単純に行う、支障の無い物件ではこの喜悦は得られない。
ちょっとした、取るに足らない、ささやかな問題は、その突破口が得られたのが昨日の午前であり、工期までわずか3日しかないことくらいだ。毎日午前様で土日出勤確定。白鳥は優雅に浮いている様で、実は水面下で必死にもがいているのだ。