To move a person

知人から「若造が組織を、人を動かすには?」と相談を受けた。
とりあえず、「近道はなく、実力、継続した努力、誠意を高次元で達成するしかない」と答えたのだが、この回答は漠然とし過ぎていて釈然としない。
そこで、この問題について真面目に考えてみる。
まず、大前提として、人の上に立つためには実力が必要であるのは間違いない。
実力は、人の「格」であるとも言え、どんな社会、組織であろうとも、実力がなかったり、人としての格が低いとなめられる。
実力と総称する様々な能力の中でも、人の上に立つためには特に関係調整能力、洞察力、受信能力、表現力などが必要であるが、組織の状況や立場によってはこれらの力だけでは不十分である。
勿論、これらの力が既に備わっていれば問題はないが、若年の人材はこれら能力とトラブル解決の経験が不足していることが多いし、実力があろうとも、それが全ての構成員に伝わるとも限らない。
実力不足を補う方法が「努力」であり、実力のアピールに有効な方法が「誠意」である。
日本人の普遍的なメンタリティーとして「頑張っている人間をけなせない」し、能力が不足していても、それを補おうと努力している様子を見れば、それを免罪符として許され、信用して貰えることが多い。
また、「誠意」とは「約束を守る」だとも言える。
実力そのものはすぐに周知不能であっても、「約束を守る」と言う行為は他人に分かり易い。
そのため、どんな些細で簡単な約束でも、愚直に果たして行くこが大切であり、些細な約束の代表例は「時間の約束」である。
「時間を守る(遅刻しない)」は「約束を守る」と相関の高い行為であり、誠意の顕著な指標である。
繰り返す。
「人を動かす」ために最も大切なものは総合的なスキルとしての「実力」である。
実力がないのに人の上に立つのは分不相応であり、本人にとっても周囲の人間にとっても不幸である。
実力が十分でなくとも人を動かさざるを得ない場合には、実力不足を埋めるため、また、免罪符として貰うためにも「努力」を惜しむべきではない。
そして、実力を認めて貰うために心がけることは「誠意」、すなわち「約束を守ること」であり、「時間を守ること」がその第一歩である。