Tokai earthquake

yano_zeon2005-11-28

静岡県に住んでおり、仕事柄、東海地震について問われることが多い。
一応、本職だから、普段雑談として言っているようなことをとりとめもなく書いてみる。

「歴史地震、古地震の被害域,周期を解析した結果、駿河湾を中心に一定周期で大きな地震が起きている」と言うことから設定されたのが東海地震である。
文系的な手法、帰納法で設定された地震であり、理系的な手法、演繹法で設定されたわけではない。
東海地震が設定された頃は、海洋地質学が興り始めた時期で、プレート説の黎明期でもあったことから、駿河トラフ、プレートの三重交合点、富士山の存在ともあいまり、説得力はあった。
その東海地震を前提に、観測網が整備され、法整備もされた。
東海地域は昔から人口の多い地域であって、古文書なども多く発見されたことからその被害域の分布から東海地震が設定されていた。
しかし、研究を進めて行くと四国の山の中の寺の坊さんの日記にも東海地震(東海地方のみに被害があった)と設定した地震の日に「今日は墓石がみんな倒れるような地震があったぜ」とか書かれてるのが発見されてきた。
歴史地震、古地震の被害域,周期を詳細に検討・解析し続けた結果、現在では駿河トラフを震源とした東海地震発生の可能性は低いとされており、南海トラフ付近をアスペリティ(地震時断層すべりの大きい領域)とした東南海地震の存在が懸念されている。
すなわち、東海地域のみ被害をもたらす東海地震ではなく、東海〜南海道地域にわたる広域地震が発生を予想されているのである。
そう考えると、静岡県は最も恵まれた県の一つである。
何故なら、想定地震による危険性は周辺他県と変わらないのに、静岡県は1970年代から「東海地震対策」として研究が進められ、全国に先駆けて、建物の耐震補強、地震時の備蓄、県民への啓蒙活動、緊急時の対応マニュアル作成が進められてきたのである。
これでも危険だと言うのなら、愛知県や三重県和歌山県高知県なんかには住めやしない。

  • 2.地盤を心配しろ

地震が来てもその地域全てが同様の危険性を持つわけではない。
問題の第一は地盤である。
しかし、これは素人目には分かりにくい。
すごく大雑把な判断方法は、「昔から人が住んでいる地域は地盤が良く、新興住宅地、最近栄えてきたバイパス沿いの地域などは地盤が悪い」である。
やはり、昔の人はよく知っていたのである。
同様に「安い土地は危険」な傾向がある。
安い土地(軟弱地盤等)で安全な建築物を築造するためには高コストがかかる。
安い土地はその安い理由を考えるべきである。
地盤を本当に心配するのならばプロにコンサルティングしてもらうしかないが、その場合は「土地を買う前」「引っ越す前」にして欲しい。
買った後、引っ越した後じゃ慰めることしか出来ないもの。

  • 3.建物を心配しろ

安くぼろい家は倒れ、高く立派な家はもつのが真実。
阪神震災の被害状況を見てもその傾向は顕著。
「安全は金で買え」

  • 4.地域を心配しろ

地盤の危険度が同じで、建物の危険度が同じでも、下町に住む者は危険だ。
大震災が来た場合、地域全体がダメージを受けるが、低所得者層が多く住む下町、路地裏は建物の倒壊率が高く、道路が通行出来なくなる。
瓦礫を動かして通路を確保している間に助けられる人が沢山居るのだから、救助の優先順位が下がる。
また、地震発生後、低所得者層が多く住む下町、路地裏の住宅密集地では火災が発生しやすく、自分の家が倒壊しておらずとも、大火から逃れる術はない。
「住宅密集地に住むな」

  • 5.その他

「三日分の食料を備蓄しろ」
「家具を固定しろ」
地震保険に入れ」
「貯金しろ」
「遠くに頼れる友人や親類を作れ」
などあるが、こちらは私の専門ではないので多くを語らない。

  • 6.「安全は金で買う」が、本当に買う必要があるか?

結論として「安全は金で買え」あるいは「安全のために何かを犠牲にしろ」と言うことですな。
当たり前すぎて申し訳ない。
でもね、元来、日本人のメンタリティーとしては「地震、火事はやむを得ない」ととらえ、そこからの復興に注力してきたわけです。
江戸なんて大火の度にリセットがかかって、都市構造が改変、最適化されてきた歴史を持つ。
第二次大戦後の焦土から大復興を遂げたように、日本人にはそれだけのバイタリティーがあるはずだ。
これだけ地震の多い国土に居住しながら地震に杞憂するよりは、もっとおおらかに生きていくべきだと思うんだよね。