第六大陸#1〜2(小川一水)

地球の五大陸の次の大陸として、月面に進出していく民間企業を描いた近未来SF小説テラフォーミング(惑星改造)とまでは行かないが、月世界における建設作業が緻密に描写されている。
幼少時〜高校時代はSF好き文学少年+天文少年であり、大学・大学院と地球科学を専攻しながら探検、天文のサークル活動を行い、現在は地質調査+建設コンサルタントを生業とする身としては、ツボに来ないはずがない(二重否定による強調)。
近未来の宇宙開発に対するシミュレート作品として、一流の内容と考証を備えている。いまだ20代で、自分より年下の作者にここまで骨太の内容をものされたのが悔しい。人物造形が平坦で内容もジュブナイルライトノベル的ではあるが、それもご愛敬。人物造形に妙を与えるには作者の人間性が熟するのを待つしかない。
クラーク、ハインラインモーガンなどの名作古典SFのような普遍性を持つかどうかは時が経たねば判定出来ないが、21世紀初頭の日本において、最も読む価値のある一作。

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)