Stray cat

不良が捨て犬に餌をあげてたり、雨の日に傘を差し掛けたりして、「実はいいやつ」と評される現象を、「不良捨て犬現象」と呼んでいる。主体が冷酷社長だったり、対象が花壇や捨て猫、子供だったりと数多くのバリエーションがある。この現象は、「意外性」が鍵となり、定常的な行動ではなく、一過性の行動によってその人の本質を見出そうとするものだ。たまに気まぐれで子犬に情をかける不良よりも、子犬を拾って世話するヤツとか、日頃から欠かさずウサギに餌をやる真面目な飼育係の方が偉いと思うのだが、こちらはむしろたまの不首尾をなじられることの方が多い。ろくでなしがたまに見せる優しさも、愛妻家の一時の気の迷いの浮気も同様に「実は...」と評価されるのではたまったもんじゃない。そう考えると真面目に生きるのが馬鹿らしく思える。
うちから一番近いコンビニの前に、いつも野良猫がたむろしている。今日、そのコンビニに行った際に仏心を出し、猫餌を物色した。牛乳やキャットフードならば器が必要だし、総菜では塩分が強すぎるしゴミが出るし、小分けされている食べきり型の猫餌はおいてなかったし、あきらめて店を出た。すると、コンビニの横の暗がりで、安っぽいスーツ姿の40絡みのサラリーマンが猫に餌をあげていた。その哀愁漂う背中を見て、野良猫に餌なんて絶対にやるもんか、と決意した。