Manual

しばらく前、大学生である弟の回りでは、ボウリングが流行っていたと言う。
そして、弟は、スコアが150〜180くらいで伸び悩んだため、『図説ボウリング』と言う教則本を購読した。弟の本棚でその本を見つけた弟の友人達は弟に「だからお前は駄目なのだ」と憤ったのだそうだ。実践練習に依らず、本を読むことによって安易に技術を習得しようとする態度が、友人達の気に召さなかったのだろう。弟は、そう言われ、納得し、少し落ち込んだ。
そして、彼が実家に帰ってきて、本棚を眺めると、『図説ボウリング』がある。「おかしい、この本は東京にあるはずだ、何故実家の本棚にあるのだろう」と手にとったところ、中に鉛筆で書き込みがしてある。やはり、自分の本ではない。と言うことは、兄者が購入したものだと言うことに思い当たった。
ここで、
「尊敬する兄もやはり教則本で独習していたのか。やはり、自己流では、限界があるから、正当な方法を書物から学ぶのは堅実である。自分のやり方は間違っていなかった」
とまとまれば、兄弟愛に満ちた、ちょっといい話だと思う。
しかし、ヤツは、
「こんな嫌な所まで、兄と似ていると思うと、つくづく悲しくなってくる」
と思ったそうだ。
死なす!!