Oedipus complex

末妹から「父の体調が悪い」と連絡があった。
仕事を手伝っていた妹が6月に千葉に嫁いで以来、還暦を手前にした父は一人で実家の理容店を切り盛りしていた。
4人の子供達が皆独立した後でもあり、体力の衰えを感じていた父は、「自分が食べていけるだけ、ちょぼちょぼと馴染み客だけを相手にして行きたい」と言っていたのだが、意に反し、妹が居なくなってからもまったく客が減らない。組合加盟業者の常として営業時間8〜19時、隔週週休二日で営業していたのものを、営業時間9〜18時、完全週休二日にシフトしても営業時間に客が集中するだけで客足が落ちなかった。田舎の理容店主としては、「親父のとこ一筋だったから、他のヤツには俺の頭はいじらせねー」などと言われては、無理してでも客をこなさざるを得ない。
また、大家族で長年暮らしてきた父としては、始めて(?)の一人暮らしとなり、家事、地域活動などもこなそうと無理もしていた。それら環境の変化と無理がたたり、体調を崩したのだと言う。精神的にも参って睡眠障害も生じ、日常生活にすら不自由が出てきた。医者には「少なくとも1ヵ月、仕事を休んで療養するように」言われ、長妹、末妹が面倒を見始めた。
80km程離れて暮らしてるとは言え、長男として父の世話をすることにやぶさかではない。しかし、オイディプス(エディプス)コンプレックスと言うわけでもないのだが、それなりの距離を保って接してきた親子としては、今更仲良しさんになってやって行く自信もない。大体において父は常々「お前の世話にはならねー」と言っていた手前、妹には弱みを見せても、私には弱みを見せたがらない。どうしたものかと悩みつつ、とりあえず、仕事が終了し次第、様子を見てみようと静岡から浜松の実家に向かった。
23時過ぎ、実家に到着するも、長妹しか居ない。父や末妹は、とたずねると、どうやら、父の友人と三人で買い物、スーパー銭湯、マッサージをはしごし、行きつけのフィリピンオカマショーパブでカラオケを熱唱しているらしい。父の回復を喜んでいいものやら、父を元気づけようと頑張っている父の友人や末妹に感謝したらよいものやら、自分の心配をあきれたらよいやら複雑な心境である。
2時頃まで起きて待っていたのだが、待ちきれず就寝。結局父達は朝4時頃までオカマ相手にはっちゃけていたらしい。善哉、善哉。