Memo

ノートをとる習慣が無かった。
板書をノートに写し取る行為にさしたる意義を感じなかったせいだ。皆がノートをとっている時間、思索にふけったり、教科書に書き込みをしていた。それで勉強効率は悪くなかったと思うのだが、どうも、授業態度が悪いと見られるのがしゃくだった。
ノートをとっていれば勉強が出来ると言うわけでもあるまいに。
だから、自分が教育実習に行った際には、空欄を作った書き込み式のレジュメを作成して配布し、「ノートをとるより、前を見ろ」と教えた。
これは評判が良かったのだが、いかんせん、二週間だけだったので、生徒達は混乱したことだろう。
就職したらこんな風習から開放されるかと思ったのだが、さにあらず、やはり会議や打合せ、講習時にメモをとる姿が上司や顧客受けする。
メモをとったからと言って、そのメモが必ず有効に活用されると言うわけでもあるまいに。
だから、会社ではいろんな帳票を整備して、必要最低限の事項を書き込むだけで仕事が遂行出来るようにした。
今のところ、評判は良い。しかし、このやり方が長期に渡って、多数の支持を得られるかどうかは疑問である。短期的には、効率的に仕事を進められるだろうが、長期的に力になるのか分からないからだ。浮いた労力を他方に向けられれば良いのだが、大概の人は安易な方向に走り、浮いた労力を快楽に向けるものだから。